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第15話 異種族の友達

Author: 黒蓬
last update Last Updated: 2025-03-09 06:00:43

次の日、昨日と同じように俺たちは二人で馬車を進ませていた。

そう二人である。昨日の襲撃でセシルさんが居ることはバレている、そして積み荷の中に王女が居ることも多分バレているだろう。そのため襲撃者には人数を誤魔化しても意味はないのだが、他の旅人には効果がある。もしもやつらが他の旅人から話を聞いた時に人数が違えば勘違いさせられるかもしれないという苦肉の策だ。

それならセシルさんだけが別行動でもいいのではないかという話もでたのだが、エルミアは昨日見惚れた通りその見目ですごく目立つ。輝いているような金色の髪に、形の良い唇。すっと通った鼻筋に深い緑色の瞳。

そして何より、動きやすくて汚れてもいいように簡素な服を着ているのに、気品を感じさせる物腰が人目を引くのだ。

彼女がこんな馬車で旅をしていたら、すれ違う人達に間違いなく只者ではないとバレるだろう。ということから、彼女には昼間は変わらず木箱に隠れて貰い、夜になったらテントで休んで貰うという結論になったのだ。

ちなみにロシェッテも姿を消すのはいつでもできるという話だったので、昼間は姿を消すようにしてもらっている。

そして今、御者はクロヴさんにお願いしている。昨夜の襲撃の影響か上手く寝付けなかった俺は荷台で休ませて貰っていた。

「ねぇ。アキツグさん、一つ聞いても良い?」

昨日のことを思い出しながらぼ~っとしていると、周りからは分からない程度に横にした木箱の蓋を開けたエルミアが話しかけてきた。

「あぁ、なんだ?」

「昨日、ハイドキャットと話してたでしょ。どうして言葉が分かるの?」

ギクッ!思わず顔が引き攣る。そういえばあの時はまだ彼女の姿は見てなかったから意識せずにロシェッテと会話してしまっていた。

「い、いや、助けて貰ったから礼を言ったりしただけで、言葉が分かるわけじゃ・・・」

「それは無理があるでしょ。私が木箱の中に居るのも当ててたし、分かったつもりの会話にしては内容がしっかりしすぎてたわ」

「まぁ、そうだよなぁ。頼むから他の人には秘密にしてくれ。俺はスキルでハイドキャットの言葉が分かるんだよ」

「スキルで?それは珍しいわね。王宮でもそん
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